【板外編11】新死語──使いにくくなった言葉たち
下記の仲間。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-category-12.html
ものの順番として「赤い本」(p.253~)から引く。こうなると、これは【伝言板】の【板外編】の扱いになる。
o( ̄ー ̄;)ゞううむ。
宛先のない伝言板って、なんかシュール。
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【練習問題27】
次の「故事ことわざ」の共通点を考えてください。
1)犬も歩けば棒に当たる
2)他山の石
3)情けは人のためならず
「故事ことわざ」をうまく使うと文章が具体的になってわかりやすくなる、と書いてある「文章読本」を見たことがあります。正論だとは思いますが、あまりおすすめはできません。安易に「故事ことわざ」を使うと、誤用してしまうことがあるからです。
1)~3)は、「故事ことわざ」の誤用の例として取りあげられることが多い、という点が共通しています。それぞれの正しい意味と、誤った解釈は次のとおりです。
1)犬も歩けば棒に当たる
正 でしゃばってよけいなことをすると、ロクなことがない
誤 積極的に動き回れば、幸運に出合うことがある
2)他山の石
正 反面教師として役立つ他者の行動のこと。「彼らの失敗を他山の石とし
て、慎重に計画を見直す」のように使う
誤 「先生の教えを他山の石として、肝に銘じます」のように、見習うべき
言動などに使うのは誤り
3)情けは人のためならず
正 人にかけた情けは、めぐりめぐって自分に返ってくるものである
誤 むやみに情けをかけるのは甘やかすことになるので、結局その人のため
にならない
1)はあまりにも誤用されることが多かったせいか、「誤」の解釈も許容されるようになってしまいました。「犬も歩けば棒に当たるというぐらいだから、やってみる価値はある」という使い方もできるということです。
2)と3)は、現段階では「誤」の解釈はあくまでも誤用と考えられていますが、将来的にどうなるかはわかったものではありません。このように「誤」の解釈が広まったのは、それだけ誤用されることが多いからです。
「故事ことわざ」を誤用しないためには、正しい意味を確認したうえで使えばよいのですから、さほど問題はありません。しかし、たとえ正しい意味で使っていても、文章がむずかしい印象になることもあるので、安易には使わないほうがよいと思います(★ページ参照)。
●誤用が定着してしまった表現も多い
【練習問題28】
次の表現のそれぞれの意味と、共通している点を考えてみてください。
1)悪貨は良貨を駆逐する
2)確信犯
3)登龍門
4)手をこまねく
5)最悪の事態はまぬがれる
「故事ことわざ」に限らず、誤用されることが多い表現はたくさんあり、誤用の解説をした書籍も多数出版されています。誤用をしないためには、それらの本を読むか、辞書などでマメに調べる習慣をつけるしかありません。
誤用について知っておいていただきたいのは、誤用が定着して許容されるようになった例が思いのほか多いことです。「犬も歩けば棒に当たる」の「誤」の解釈もそうですし、★ページで紹介した「とても+肯定形」も、登場したころには誤用とされていたはずです。
ここであげた1)~5)も、誤用が定着してしまった例と考えられます。
1)は、「誤用が一般的になると正しい用法のほうが使われなくなる」といいたいときにぴったりの表現ですが、本来はそういう意味ではありません。2)3)も本来の意味とは違うニュアンスで使われている表現です。本来の意味についての説明は、煩雑になるので省略します。
4)5)は、意味の誤用が定着したのではなく、言葉そのものの誤用が定着してしまったと考えられます。本来は「手をこまぬく」のはずだった4)は、「手をこまねく」も許容されているようです。5)も本来の「最悪の事態はまぬかれる」の形のほうがむしろ珍しいでしょう。
もともと誤用だったのなら、本来の正しい意味や形で使うべきだ、と主張する気はありません。もともとの意味を尊重するより、一般に通用している意味を重視するほうが、言葉の使い方として現実的だと思います。誤用であるにもかかわらず定着しただけあって、1)~3)は非常に使いやすい表現ですし、4)5)も本来の形よりも語感がよい気がする表現です。
【Coffee Break】
「役不足」の誤用はマンガの定番
誤用されることが多い表現としては、次のようなものがよくあげられます。
役不足/さわり/私淑/斜に構える/気が置けない
なかでも目にすることが多いのが「役不足」の誤用です。この言葉はもともとは芝居の用語で、「役者の格に比べて、割り当てられた役が軽すぎる」ことを指したといわれます。これが転じて、一般社会でも「当人の力量に比べて役割などが軽い」という意味で使われるようになりました。
ところが、実際の使用例を見ると、ほとんどが正反対の「力不足」「力量不足」「荷が重い」「荷が勝つ」の意味で使われています。おそらく、「役不足」のほうが語感がよいからです。もう少し正確にいうと、「役不足」のほうがカッコよくて言葉に迫力が感じられるからでしょう。
この誤用が頻繁に出てくるのは、マンガの対決シーンです。
「キサマじゃ役不足だ!」
と相手をののしるときに使われます。
「キサマじゃ力不足だ!」
「キサマには荷が重い!」
と正しい言葉の使い方をすると、間が抜けた感じになります。
「たかがマンガの中の誤用に目くじらを立てなくても……」という考え方もあるでしょうが、マンガの影響力はあなどれません。「役不足」の誤用を目にするたびに、「このまま定着してしまうんじゃないだろうか」と不安を感じます。
もともとの意味を知らなくても、論理的に考えれば「役」が「不足」しているのですから「力不足」とは逆の意味になるのは明らかです。もっとも、「負けず嫌い」のように論理的には説明できない表現もあるので、あまり強くは主張できませんが。
「役不足」にかわる表現として有力なのは、「役者不足」です。誤用に関する本のなかには「そんな言葉は存在しない」と書いてあるものもありますが、感じが出ている言葉だと思います。新聞でも何度か目にしたことがあり、今後は定着していくかもしれません。
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〈メモ&クイズ〉下記の言葉に共通することはなんでしょう。
負けず嫌い
置き忘れる
取り付ける
【追記メモ】
下記あたりはもう誤用なんて言えないよな。
とても+肯定形
なるほど(好ましくない相槌)
こだわり(本来は否定的な語)
生き様
さらなる
「役不足」「役者不足」に関しては下記参照。
【よく目にする誤用の御三家 】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-122.html
【海老蔵、役者不足で強行出演も!】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1669.html
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-category-12.html
ものの順番として「赤い本」(p.253~)から引く。こうなると、これは【伝言板】の【板外編】の扱いになる。
o( ̄ー ̄;)ゞううむ。
宛先のない伝言板って、なんかシュール。
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【練習問題27】
次の「故事ことわざ」の共通点を考えてください。
1)犬も歩けば棒に当たる
2)他山の石
3)情けは人のためならず
「故事ことわざ」をうまく使うと文章が具体的になってわかりやすくなる、と書いてある「文章読本」を見たことがあります。正論だとは思いますが、あまりおすすめはできません。安易に「故事ことわざ」を使うと、誤用してしまうことがあるからです。
1)~3)は、「故事ことわざ」の誤用の例として取りあげられることが多い、という点が共通しています。それぞれの正しい意味と、誤った解釈は次のとおりです。
1)犬も歩けば棒に当たる
正 でしゃばってよけいなことをすると、ロクなことがない
誤 積極的に動き回れば、幸運に出合うことがある
2)他山の石
正 反面教師として役立つ他者の行動のこと。「彼らの失敗を他山の石とし
て、慎重に計画を見直す」のように使う
誤 「先生の教えを他山の石として、肝に銘じます」のように、見習うべき
言動などに使うのは誤り
3)情けは人のためならず
正 人にかけた情けは、めぐりめぐって自分に返ってくるものである
誤 むやみに情けをかけるのは甘やかすことになるので、結局その人のため
にならない
1)はあまりにも誤用されることが多かったせいか、「誤」の解釈も許容されるようになってしまいました。「犬も歩けば棒に当たるというぐらいだから、やってみる価値はある」という使い方もできるということです。
2)と3)は、現段階では「誤」の解釈はあくまでも誤用と考えられていますが、将来的にどうなるかはわかったものではありません。このように「誤」の解釈が広まったのは、それだけ誤用されることが多いからです。
「故事ことわざ」を誤用しないためには、正しい意味を確認したうえで使えばよいのですから、さほど問題はありません。しかし、たとえ正しい意味で使っていても、文章がむずかしい印象になることもあるので、安易には使わないほうがよいと思います(★ページ参照)。
●誤用が定着してしまった表現も多い
【練習問題28】
次の表現のそれぞれの意味と、共通している点を考えてみてください。
1)悪貨は良貨を駆逐する
2)確信犯
3)登龍門
4)手をこまねく
5)最悪の事態はまぬがれる
「故事ことわざ」に限らず、誤用されることが多い表現はたくさんあり、誤用の解説をした書籍も多数出版されています。誤用をしないためには、それらの本を読むか、辞書などでマメに調べる習慣をつけるしかありません。
誤用について知っておいていただきたいのは、誤用が定着して許容されるようになった例が思いのほか多いことです。「犬も歩けば棒に当たる」の「誤」の解釈もそうですし、★ページで紹介した「とても+肯定形」も、登場したころには誤用とされていたはずです。
ここであげた1)~5)も、誤用が定着してしまった例と考えられます。
1)は、「誤用が一般的になると正しい用法のほうが使われなくなる」といいたいときにぴったりの表現ですが、本来はそういう意味ではありません。2)3)も本来の意味とは違うニュアンスで使われている表現です。本来の意味についての説明は、煩雑になるので省略します。
4)5)は、意味の誤用が定着したのではなく、言葉そのものの誤用が定着してしまったと考えられます。本来は「手をこまぬく」のはずだった4)は、「手をこまねく」も許容されているようです。5)も本来の「最悪の事態はまぬかれる」の形のほうがむしろ珍しいでしょう。
もともと誤用だったのなら、本来の正しい意味や形で使うべきだ、と主張する気はありません。もともとの意味を尊重するより、一般に通用している意味を重視するほうが、言葉の使い方として現実的だと思います。誤用であるにもかかわらず定着しただけあって、1)~3)は非常に使いやすい表現ですし、4)5)も本来の形よりも語感がよい気がする表現です。
【Coffee Break】
「役不足」の誤用はマンガの定番
誤用されることが多い表現としては、次のようなものがよくあげられます。
役不足/さわり/私淑/斜に構える/気が置けない
なかでも目にすることが多いのが「役不足」の誤用です。この言葉はもともとは芝居の用語で、「役者の格に比べて、割り当てられた役が軽すぎる」ことを指したといわれます。これが転じて、一般社会でも「当人の力量に比べて役割などが軽い」という意味で使われるようになりました。
ところが、実際の使用例を見ると、ほとんどが正反対の「力不足」「力量不足」「荷が重い」「荷が勝つ」の意味で使われています。おそらく、「役不足」のほうが語感がよいからです。もう少し正確にいうと、「役不足」のほうがカッコよくて言葉に迫力が感じられるからでしょう。
この誤用が頻繁に出てくるのは、マンガの対決シーンです。
「キサマじゃ役不足だ!」
と相手をののしるときに使われます。
「キサマじゃ力不足だ!」
「キサマには荷が重い!」
と正しい言葉の使い方をすると、間が抜けた感じになります。
「たかがマンガの中の誤用に目くじらを立てなくても……」という考え方もあるでしょうが、マンガの影響力はあなどれません。「役不足」の誤用を目にするたびに、「このまま定着してしまうんじゃないだろうか」と不安を感じます。
もともとの意味を知らなくても、論理的に考えれば「役」が「不足」しているのですから「力不足」とは逆の意味になるのは明らかです。もっとも、「負けず嫌い」のように論理的には説明できない表現もあるので、あまり強くは主張できませんが。
「役不足」にかわる表現として有力なのは、「役者不足」です。誤用に関する本のなかには「そんな言葉は存在しない」と書いてあるものもありますが、感じが出ている言葉だと思います。新聞でも何度か目にしたことがあり、今後は定着していくかもしれません。
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〈メモ&クイズ〉下記の言葉に共通することはなんでしょう。
負けず嫌い
置き忘れる
取り付ける
【追記メモ】
下記あたりはもう誤用なんて言えないよな。
とても+肯定形
なるほど(好ましくない相槌)
こだわり(本来は否定的な語)
生き様
さらなる
「役不足」「役者不足」に関しては下記参照。
【よく目にする誤用の御三家 】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-122.html
【海老蔵、役者不足で強行出演も!】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1669.html
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